作成のポイント

 3.就業規則作成のポイント

 常態として10人以上の労働者を使用する事業場では、必ず就業規則を作成しなければなりません。また、10人未満であっても就業規則をつくることが望まれます。

 就業規則は、事業場で働く労働者の労働条件や服務規律などを定めるものですから、そこに働くすべての労働者に適用されるように定めをすることが必要です。なお、パートタイム労働者等がいる場合は一般の就業規則のほかに、パートタイム労働者等に適用される別個の就業規則を作成することもできます。

 就業規則には、必ず記載しなければならない事項と、定めをした場合は記載しなければならない事項の2種類があります。その他義務付けられていない事項を任意に記載することができます。
 (1)絶対的必要記載事項 必ず記載しなければならない事項
 (2)相対的必要記載事項 定めをした場合は記載しなければならない事項
 (3)任意的必要記載事項 義務付けられていないが任意に記載することができる事項

 就業規則の内容は、法令または労働協約に違反することはできません。これらに違反する就業規則は、その部分について無効となります。

 就業規則で定めたことは、労働者と事業主の双方を拘束することになりますので、その内容は事業場の実態に合ったものにしなければなりません。

 就業規則の内容が複雑でわかりにくかったり、また、抽象的なものである場合は、解釈をめぐって労使間にトラブルが生じることがありますので、その内容は誰でも理解できるように、わかりやすく明確なものとしなければなりません。

 就業規則は、事業主が作成するものですが、労働者が知らないうちに労働条件が一方的に不利益に変更されたり、厳しい服務規律が定められることのないように、就業規則を作成したり、変更する場合には、労働者の代表の意見を聴かなければならないことになっています。

 作成した就業規則は、労働者の代表の意見書を添付して、所轄の労働基準監督署長に届出ることが必要です。

 作成した就業規則は、労働者に配布したり、事業場に掲示したりして、労働者に周知させることが義務づけられています。


<解説>
■過半数代表者とは
 労働者の過半数代表者とは、本社や支店などの事業場ごとにみて、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合はその労働組合、過半数で組織する労働組合がない場合は、労働者の過半数を代表する者を選出します。

■労働者の過半数を代表する者とは
 労働者の過半数を代表する者は、次のいずれにも該当する者です。
 ○労働基準法第41条第2号に規定する「監督又は管理の地位にある者」ではないこと
 ○就業規則について、労働者を代表して意見書を提出する者を選出することを明らかにして
  実施される投票や挙手等の方法による民主的な手続きによって選出された者であること

■選出の方法
 労働者の過半数を代表する者を選出するときの選出方法については、次のような民主的な方法による必要があります。
 ○投票や挙手、回覧、話し合いなどで過半数の労働者の支持を得た者を選出する方法
 ○候補者の中から投票などの方法によって信任を得た者を選出する方法

 なお、次のような選出方法は、認められません。
 ○使用者が一方的に指名する方法
 ○親睦会の代表者を自動的に過半数代表者とする方法
 ○一定の役職者を自動的に過半数代表者とする方法

■過半数代表者への不利益取扱いの禁止
 過半数代表者になろうとしたこと、現に過半数代表者であること、過半数代表者としての正当な行為をしたこと(反対意見を述べたことなど)を理由として、その労働者を不利益に取扱うことは労働基準法で禁止されています。

■意見を聴くとは
 「意見を聴く」とは、ただ単に意見を聴けばよく、就業規則の内容について、同意を得たり、協議したりすることまでを求めるものではありません。使用者は、その意見に法的な拘束を受けません。反対意見であっても同様です。
 しかし、労働基準法第2条第1項にあるように、労働条件は労働者と使用者が対等の立場において決定すべきものですので、この意見についてはできるだけ尊重することが望ましいでしょう。
 【労働基準法第2条第1項】
 労働条件は、労働者と使用者が、対等の立場において決定すべきものである。

■意見書とは
 意見書とは、労働者の過半数代表者から聞いた意見を記載し、その者の署名又は記名押印した書類のことです。

■届出書類の様式
 所轄の労働基準監督署に届け出る場合の届出様式については、法令上の定めはありません。任意に作成してよいことになっています。

■労働者に周知させる
 労働基準法では、使用者は、就業規則を労働者に周知しなければならないとしています。就業規則は、労働者の労働条件や服務規律などを定めたものですので、労働者全員に知らせておかなければ意味がありません。

■周知の方法
 使用者は、次の方法によって、労働者に周知する必要があります。
(1)常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、または備え付けること。
(2)書面を労働者に交付すること。
(3)磁気テープ等に記録し、常時確認できる機器を設置すること。

■周知していない就業規則の効力
 お金や手間ひまをかけて、せっかく合理的な内容の就業規則を作成しても、それを労働者へ周知させなければ、就業規則に定めた労働条件は、労働者の労働条件になりません(労働契約法第7条)。