労使協定とは

<労使協定の意義>

1.労使協定とは

 労使協定とは、使用者と「当該事業場において労働者の過半数で組織する労働組合、過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者(労働者代表)」との間で、書面により取り決められる協定のことをいいます。

2.労使協定の法的効果

 労働基準法(以下「労基法」)の規定の多くが、罰則をともなっており、また強行的かつ直接的な効力を持って持っていることから、労使協定の締結を条件として、当該規定に係る制限をはずして、本来ならば労基法の規制に抵触する措置を、協定の定めるところにより、一定の法規制を緩和ないし免除する効果(「免罰的効力」という)が認められます。

 しかし、労働協約とは異なって、たとえば、労働者に時間外労働の義務を発生されるという、労働契約上の効力は認められません。

 労働協約の効力は、原則として使用者と労働組合、所属する労働組合員に限られるのに対し、労使協定は、事業場の全従業員との関連で効力を持ちます。

3.労使協定の必要な場合

 労基法上では、労働条件などの内容を決めるさまざまな場面で、労使協定の締結を要件としています。また、労働基準監督署への届出が必要とされるものもあります。

  労使協定が必要なとき 労基法の規定 届出
労働者の委託によって社内預金を管理するとき 18条2項 必要
賃金から一部控除して支払うとき 24条1項   
1か月単位の変形労働制をとるとき 32条の2 必要
フレックスタイム制をとるとき 32条の3   
1年単位の変形労働時間制をとるとき 32条の4 必要
1週間単位の非定型的変形労働時間制をとるとき 32条の5 必要
一斉に休憩時間を与える方法によらないとき 34条2項   
時間外労働・休日労働を行わせるとき 36条1項 必要
割増賃金の割増率引き上げ分に相当する有給代替休暇をあたえるとき 37条3項   
事業場外のみなし労働時間制をとるとき 38条の2 必要
専門業務型裁量労働制をとるとき 38条の3 必要
年次有給休暇の時間単位の分割付与を行うとき 39条4項   
年次有給休暇の計画的付与を行うとき 39条6項   
年次有給休暇について支払われる賃金の算定基礎を健康保険法上の標準報酬日額とすること 39条7項   

 ⑨は、2008年の労基法改正で導入されたもので、1か月に60時間を超える時間外労働に対する50%の割増賃金について、労使協定を締結することにより、60時間を超えかつ割増賃金が引き上げられた部分に対応した部分(25%部分)について、割増賃金に代えて有給の代替休暇を付与することが可能となりました。

 ⑫は、2008年の労基法改正で新設されたものであり、労使協定により、1年に5日分を限度として、時間単位の年休の取得が可能になりました。

 労基法のほか、育児・介護休業法や雇用保険法、賃金支払確保法などにも労使協定によるさまざまな措置が規定されています。

4.労働者代表の選出(労基法施行規則6条の2)

 当該事業場において労働者の過半数を組織する労働組合がない場合は、労働者の過半数を代表する「過半数代表者」を選出する必要があります。

 労使協定は、使用者と労働者代表が、対等な立場で労働条件等について取り決めるものですから、過半数代表者の選出については、労働者の意思を代表する者として、労働者の中から公正に選出しなければなりません。

 労基法においては、過半数代表の選出については、①労基法第41条2号に規定する管理監督者でないこと、②労使協定等の労働者の過半数代表者の選出であることを明らかにして行われる投票、挙手等の方法によって選出された者であること、の2つが要件となっています。

 また、使用者は、過半数代表者について、過半数代表者であること、過半数代表者になろうとしたこと、過半数代表者として正当な行為をしたこと、を理由として不利益な取り扱いをしてはなりません。