助言・指導、あっせん事例

助言・指導、あっせんの事例

 厚生労働省が発表する、労働関係について個々の労働者と事業主との間の紛争を円滑に解決するための「個別労働紛争解決制度施行状況」についてから、制度を利用した事例を紹介しています。

 平成23年度 助言・指導・あっせんの事例

 【助言・指導の例】

 事例1:契約更改後に退職勧奨を受けたことに係る助言・指導

<事案の概要>
 申出人は、○○会社に半年間の有期契約社員として勤務していたが、第1回目の契約更新をした直後に、業務上の軽微なミスを理由として、自宅で待機をするよう申し渡された。
 さらに、上司から「契約更新したけれど、ミスも多いし、やっぱり辞めたほうがいいんじゃないか」と退職願を提出するよう求められたが、申出人は自ら退職する意思はないため、雇用の継続を求めたいとして助言・指導を申し出たもの。
<助言・指導の内容・結果>
 労働局長の助言・指導により、事業主に対し、判例、労働契約法について説明し、労使双方での話し合いによる解決を促した。
 事業主と申出人の話し合いの結果、雇用の継続はできないものの、会社都合による退職とすること、約1ケ月分の賃金補償を行うこと、申出人が希望する条件の仕事を紹介することにより、お互いに合意し、解決が図られたもの。

 事例2:いじめ・嫌がらせに係る助言・指導

<事案の概要>
 申出人は、同僚の労働者より、不必要な雑用をさせられたり、許可するまでトイレに行かせない等の嫌がらせを受けた。また、仕事がないからという理由で勤務シフトを組まれないこともあった。
 このような、いじめ・嫌がらせを止めさせて欲しいこと、適切な勤務シフトを組んで欲しいことを求めて、助言・指導を申し出たもの。
<助言・指導の内容・結果>
 労働局長の助言・指導により、当事者による話し合いによる解決を促したところ、迅速に話し合いがもたれた。
 その結果、事業主側は申出人の言う、いじめ・嫌がらせがあったことを認め、謝罪するとともに、今後は、申出人の意向を考慮した勤務シフトを組むようにすることになった。

 【あっせんの例】

 事例1:整理解雇に係るあっせん

<事案の概要>
 申請人は、5年前から〇〇会社△△営業所の正社員として勤務していたが、業績不振を理由に△△営業所が閉鎖となり、解雇を通告された。
 業績不振というが、近隣の地域の他の営業所に配置転換となった同僚が何人もいて、申請人は、自分が整理解雇される理由がわからず、また解雇に関する説明を求めても「あなたに働いてもらう場所がないから」と言われるだけであった。
 申請人としては、〇〇会社が解雇を回避する努力を十分に行ったとは思えず、経済的損失・精神的苦痛に対して補償金として、半年分の給料を求めたいとしてあっせんを申請したもの。
<あっせんのポイント・結果>
 あっせん委員が双方の主張を聴き、当事者間での調整を図ったところ、解決金として25万円を支払うことで合意し、解決した。

 事例2:いじめ・嫌がらせに係るあっせん

<事案の概要>
 社内の同僚などから嫌がらせを受け、抑うつ状態になった休業中の労働者に対して、雇用期間満了のため、退職手続きを行ったところ、休業中の労働者より、「自分が抑うつ状態となったのは、会社の配慮が足りなかったからだ。生活費・慰謝料として、給料3ケ月分(約100万円)を請求する。」と申し立てられたことを受け、会社側があっせんを申請したもの。
<あっせんのポイント・結果>
 会社は労働者の訴えに基づき調査を実施したところ、同僚の嫌がらせがあったことを確認し、あっせん委員の調整により、解決金として50万円を支払うことにより、解決した。

 平成24年度 助言・指導、あっせんの事例

【助言・指導の例】

 事例1: 顧客から苦情を受けたこと理由に解雇され係る助言・指導

<事案の概要>
 申出人は、〇〇会社にアルバイトとして勤務していたが 上司より顧客から苦情があったと説明を受け、1週間の自宅待機を命じられた。
 1週間後に出勤してみると、翌月のシフト名前がなかったため、上司に確認したところ、「もう使えないからクビにする。 」と言われた。
 顧客からの苦情について詳細な説明がなく、解雇の撤回を求めるため、話し合いの場を設けたいととして助言・指導を申し出たもの。
<助言・指導の内容・結果>
 事業主に対し、労働契約法等について説明し、申出人と話し合うよ助言した。
 助言に基づき、事業主と申出人の話し合いが行われ 結果、解雇が撤回されたもの。

 事例2:操業の低下を理由に整理解雇されたことによる助言・指導

<事案の概要>
 申出人は、派遣先社員とトラブルになり、派遣元会社より操業の低下を事由として解雇通告を受けた。
 解雇理由が操業の低下となっているが、派遣元会社と派遣先会社は、解雇日以降も派遣契約を結んでいることから、解雇に納得がいかないため、話し合いの場を設けたいとして助言・指導を申し出たもの。
<助言・指導の内容・結果>
 派遣元事業主に対し、労働契約法について説明し、申出人と話し合うよう助言した。
 助言に基づき、派遣元事業主と申出人の話し合いが行われ、結果、申出人に対して補償金が支払われること及び申出人が解雇されることで双方が合意したもの。

 事例3:いじめ・嫌がらせ(作業内容)に係る助言指導

<事案の概要>
 申出人は、業務中に腰を負傷した。
 申出人の勤務内容は上司が割り振りを行っているが、負傷後も他のラインスタッフと比較して過酷な作業が割り振られ、負傷箇所に悪影響を与えている。
 上司に作業の割り振りの見直しを求めるも、改善がなされかったことから、作業内容の改善を図るよう助言・指導を申し出たもの。
<助言・指導の内容・結果>
 事業主に対し、事実関係をよく確認し、申出人と話し合うよう助言した。
 助言に基づき、事業主は主治医への意見聴取や、割り振りを行った上司への聴取を行った上で、申出人と話し合い、結果、申出人の業務について見直しがなされ、比較的軽易な作業を割り与えられることになったもの。

 事例4:いじめ・嫌がらせ(暴言・暴力)に係る助言指導

<事案の概要>
 申出人は、店長より業務のことで馬鹿呼ばわりされ、大声で叱責された。また、出社した際に、店長に挨拶をしたところ、直後に頭を叩かれた。抗議すると更に叩かれ、謝罪を求めても応じなかった。
 就労環境の改善を求めて、助言・指導を申し出たもの。
<助言・指導の内容・結果>
 事業主に対し、店長の指導に行き過ぎた部分があるかもしれないので、事実確認し、就労環境の改善について当事者を交えて話し合うよう助言した。
 助言に基づき、調査等が行われ、申出人に対し店長から謝罪があり、今後の暴言・暴力を行わないことについて誓約した。

 事例5:労働条件引下げに係る助言・指導

<事案の概要>
 申出人は、平成23年12月頃より期間契約社員として勤務しており、募集要項には「週3日~、1日4時間以上」とあり、書面では具体的な労働日数、時間等の記載はなかったものの、採用時に最低でも週3日以上の勤務として口約束を得ていた。
 最初のうちは、週3日、1日4時間以上の勤務ができていたが、徐々に勤務日数、勤務時間が減らされてきた。
 申出人は、入社時の労働契約を遵守するよう伝えてもらいたいとして、助言・指導を申し出たもの。
<助言・指導の内容・結果>
 事業主に対し、労働契約の変更にあたっては、合意の原則が基本になることを説明し、合意の原則を考慮した上で申出人と話し合うよう助言した。
 助言に基づき、当事者による話し合いがなされ、今まで通りの労働条件で継続雇用されることになったもの。

 事例6:退職勧奨に係る助言・指導

<事案の概要>
 申出人は、〇カ月の有期契約を結び勤務していたが、店長よりミスを申出人の責任にされることや、言葉のパワハラを受けようなった。
その後、〇月〇日に店長より「契約期間の最後まで一緒に働くことは難しいので辞めてもらいたい。」と言われ、退職届の提出を求められた。
 申出人は、本社に電話するも納得のいく対応がとられなかっため、話し合いの場を設けてもらいたいとして、助言・指導を求めたもの。
<助言・指導の内容・結果>
 事業主に対し、申出人との話し合いの場を設けるよう助言した。
 助言に基づき、当事者による話し合いがなされ、申出人が退職すること及び賃金の30日分相当の解決金を支払うことで、双方が合意した。

 【あっせんの例】

事例1:解雇に係るあっせん

<事案の概要>
 申請人は、作業の配置を担当する上司より「枠がないので辞めてくれ」と言われ解雇された。解雇の理由について説明を求めるも、会社側は解雇ではないと主張したため、その主張に納得できない。
 このため、謝罪と精神的損害に対する補償金として25万円の支払いを求めたいとしてあっせん申請したもの。
<あっせんのポイント・結果>
 あっせん委員が双方の主張を聴き、調整を図ったところ、解決金として10万円を支払うことで合意が成立し、解決した。

 事例2:整理解雇に係るあっせん

<事案の概要>
 申請人は、業績悪化による部門閉鎖を理由として解雇された。解雇の理由を業績悪化としているが、解雇された後に正社員を採用しているため、本当に整理解雇が必要だったのか、納得ができず、解雇が不当だったと主張するもの。
 このため、経済的、精神的損害に対する補償金として450万円の支払いを求めたいとしてあっせん申請したもの。
<あっせんの ポイント・結果>
 あっせん委員が双方の主張を聴き、調整を図ったところ、会社側は解決金として一定額の支払いに理解を示し、申請人は解決金額について歩み寄り、解決金として210万円を分割で支払うことで合意が成立し、解決した。

 事例3: 職場の上司によるいじめ・嫌がらせ(暴言等)に係るあっせん

<事案の概要>
 申請人は、採用されてから現在に至るまで、職場の上司より暴言、差別等を受けており、精神的に限界状態にある。
 このため、暴言等により体調を崩し退職せざるを得ないことから、50万円の慰謝料の支払いを求めたいとしてあっせん申請したもの。
<あっせんの ポイント・結果>
 あっせん委員が双方の主張を聴き、調整を図ったところ、当事者間の歩み寄りにより、解決金として20万円を支払うことで合意が成立し、解決した。

 事例4: いじめ・嫌がらせに係るあっせん(事業主からの申請)

<事案の概要>
 申請人(事業主)は、退職した労働者から在職中にパワハラを受けたことによる慰謝料として100万円の支払いを求める旨の書面を受けた。社内調査の結果、机を叩く等の行為があったことは事実であったが、退職した労働者に対して、事実関係の聴取を経た上で、謝罪と円満な解決に向けた話し合いの開催を打診したところ、断られてしまったもの。このため、適切な金額での解決を求めたいとしてあっせ ん申請したもの。
<あっせんの ポイント・結果>
 あっせん委員が双方の主張を聴き、調整を図ったところ、解決金として60万円を支払うことで合意し、解決した。

 事例5: 労働条件の引下げ(賃金の引下げ)に係るあっせん

<事案の概要>
 申請人が勤務していた〇〇会社は、平成〇年〇月より業績不振による給与削減を実施し、削減した分は将来賞与等で返金していく旨の通告を従業員に行った。
 申請人は引下げに同意していなかったものの、一方的に給与削減がなされたことにより、生活困窮のためやむなく退職した。
 このため、本来もらえたはずの給料及び精神的苦痛に対する慰謝料の合計180万円の支払いを求めたいとしてあっせん申請したもの。
<あっせんの ポイント・結果>
 あっせん委員が双方の主張の聴き、調整を図ったところ、当初は双方の主張する解決金額に開きがあったものの、解決に向けて歩み寄りがなされたことにより、解決金として賃金減額分70万円(直近1年6ヶ月分)を支払うことで合意し、解決した。

 事例6: 退職勧奨に係るあっせん

<事案の概要>
 申請人は、上司より退職届の提出を指示され、提出しない場合には、無断欠勤扱いをする等の方法により支店にいられないような措置をとるとして、退職を強要されたため、やむなく退職届を提出した。一旦は、退職届を提出したものの、自身の意思に反していると思い、退職の撤回を求めるも、認められなかった。
 このため、不当な退職勧奨による補償として年収相当の350万円の支払いを求めたいとしてあっせん申請したもの。
<あっせんの ポイント・結果>
 あっせん委員が双方の主張を聴き、調整を図った。会社側は当初から解決金の支払いの意思があったことから、あっせん委員が、紛争解決に向けて解決金額について双方の歩み寄りを促したところ、解決金として60万円を支払うことで合意し、解決した。

2013.6.13