管理監督者の範囲

「管理監督者」の適正な範囲

 2008年、「名ばかり管理職」問題が大きな話題となりました。この事件は、ハンバーガーチェーン店の店長が、自分は法律上の管理監督者には当たらないとして、時間外手当の支払い等を求めたものでしたが、この事件を契機として、多くの企業で管理職の取扱いについて裁判となりました。

 この背景には、そもそも労働基準法が定める管理監督者の定義を、正確に理解しないまま管理監督者として取り扱っていることに主な原因があります。

                              ●「管理監督者」に関する通達
                              ●「管理監督者」に関する裁判例

 管理監督者の意義

 労働基準法における「管理監督者」とは、労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的立場にある者であり、労働時間、休憩、休日等に関する規制の枠を超えて活動することが要請される重要な職務と責任を有し、現実の勤務態様も、労働時間等の規制になじまないような立場にある者に限定されます。

 それ故、管理監督者については、一般の従業員と同様に労働時間管理を行うことがそぐわないことから、労働時間(深夜業を除く)、休憩、休日に関する規制の適用を受けないことになっています。

 管理監督者性の判断基準

 「管理監督者」に当てはまるか否かは、役職名ではなく、その職務内容、責任と権限、勤務態様等の実態によって判断されます。

 実際に企業内で管理職と称されて課長、店長などの肩書きがあっても、次の判断基準に基づき総合的に判断した結果、労働基準法上の「管理監督者」に該当しない場合には、労働基準法で定める労働時間等の規制を受けることになり、時間外割増賃金や休日割増賃金の支払いが必要となります。

 なお、管理監督者であっても、深夜業(22時から翌日5時まで)の割増賃金は支払う必要がありますし、年次有給休暇も一般労働者と同様に与える必要があります。

 「管理監督者」を判断する基準は、次のとおりです。

労働時間、休憩、休日等に関する規制の枠を超えて活動せざるを得ない重要な職務内容および責任と権限を有していること。

 労働条件の決定その他労務管理について、経営者と一体的立場にあり、労働時間等の規制の枠を超えて活動することが要請される重要な職務内容を有していなければ、管理監督者とはいえません。また、経営者と一体的な立場にあるというためには、経営者から重要な責任と権限を委ねられている必要があります。管理職の肩書きがあっても、自らの裁量で行使できる権限が少なく、多くの事項について上司の決裁が必要であったり、上司の命令を部下に伝達するに過ぎないような者は、管理監督者とはいえません。

出退勤について厳格な規制を受けずに、自己の勤務時間について自由裁量を有していること。

 管理監督者は、時を選ばず経営上の判断や対応が要請され、労務管理においても一般労働者と異なる立場にある必要があります。労働時間等について厳格な管理をされているような場合は、管理監督者とはいえません。

賃金等について、その地位にふさわしい待遇を受けていること。

 管理監督者は、その職務の重要性から、給与、賞与、その他の待遇において、一般労働者と比較して相応の待遇がなされていなければなりません。

 判断基準のチェックリスト(総合判断が必要)

①職務内容、責任と権限
 □経営方針、重要事項の決定に参画しているか。
 □募集・採用(人選を含む)・解雇の権限があるか。
 □職務内容に人事考課が含まれているか。
 □勤務割表の作成や残業命令を行う責任と権限があるか。

②勤務実態
 □遅刻・早退のとき、賃金を控除したり人事考課によりマイナス 評価を行うなど不利益な
  取扱いがなされていないか。
 □自己の勤務時間について、実質的に見て裁量権が行使できるか。
 □出退勤管理は一般社員と変わらないか。

③待遇
 □役職手当を含めた待遇が管理監督者に見合うものか。
 □当該企業の中でどのくらい高い待遇であるか。
 □すぐ下の非管理監督者の者の賃金水準と比較して充分といえるか。